iPS細胞由来のヒトミニ臓器(オルガノイド ※外部サイトの説明記事)は創薬や再生医療への応用が期待されています。一方で、現状のオルガノイドは、成人の臓器に匹敵するサイズや機能ではありません。この根本要因は、臓器発生や個体発生の仕組みの多くが未だベールに包まれ、謎のままであり、オルガノイド培養系において発生の仕組みを十分に再現できていないからだと我々は考えています。

そこで、将来的に、創薬や再生医療などへの応用に繋げることを目指して、“臓器の発生/形成に必要な体の中の現象を明らかにし、それを再現することによってヒトオルガノイドの機能を向上する”あるいは“ヒトオルガノイドの培養系を改良して生体を再現する”研究を進めています。
臓器発生現象の再現によるヒトiPS細胞由来オルガノイドの高度化
1.ヒトiPS細胞由来オルガノイドのサイズ・機能向上に有効な“胎盤由来因子”の発見

従来、ヒト臓器の創出に向けてiPS細胞から機能細胞への「分化誘導系」の開発が活発に推進されてきました。しかしながら、ヒトサイズの大型臓器を創るために極めて重要である、「前駆細胞の増幅誘導系」の開発は全く成功していませんでした。
本研究では、肝臓の初期形成期の発生学的解析により、遠隔臓器である胎盤から血流により液性因子が低酸素環境下において供給されることで、肝前駆細胞の増幅による肝臓のサイズ増大が誘導されることを新たに発見しました。この胎盤由来因子の供給を再現することにより、ヒトiPSC肝臓オルガノイド内の前駆細胞の増幅およびオルガノイドサイズを人為的に増大させることに成功しました。また、この後に生じる酸素化を再現することにより、ヒトiPSC肝臓オルガノイドを高機能化することにも成功しました。今後、血液灌流を再現した効率的な胎盤由来因子・酸素の供給システムを開発することにより、肝不全治療に応用可能な大型のヒト肝臓創出が実現化することが期待されます。
原著論文:https://www.nature.com/articles/s41467-025-57551-w
概要(日本語、英語):
https://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/research/papers/page_00235.html
https://www.gifu-pu.ac.jp/news/2025/03/-ips.html
https://www.eurekalert.org/news-releases/1079718
2. 組織構造の形成に必要な血管特性を再現したヒトiPS細胞由来の血管の創出
胆管は、肝臓特異的な門脈の周囲から発生することが古くから知られています。我々は、初期的に胆管細胞が発生する時にどのような性質(未熟/成熟)の血管平滑筋細胞が多いのかを明らかにするための観察を行い、未熟な血管平滑筋細胞が胆管細胞の出現に重要であることを示唆しました。

このような観察結果を基にして、ヒトiPS細胞由来の血管を作り、ヒトiPS細胞由来のオルガノイドと共培養すると、内部に胆管構造を有する肝臓オルガノイドが構築されました。これは、ヒトiPS細胞からの臓器創出という目標を達成するための大きな一歩となる研究成果であり、ヒトの肝臓発生についての基礎的研究にとどまらず、疾患モデル開発やヒト臓器創出技術開発にも大きく貢献することが期待されます。
原著論文:https://www.nature.com/articles/s41467-024-51487-3
概要(日本語):
https://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/about/press/page_00296.html





